健康ライフGame

あなただけのストーリーをデザインする道具箱

赤ワインのポリフェノール:レスベラトロール

レスベラトロールは、ブドウ、ブルベリー、クランベリー等のベリー類やワインに含まれ、抗がん性やアンチエイジングの効果があるとされています。

レスベラトロールは、寿命延長作用の研究が、酵母、線虫、ハエ、魚類で報告され、2006年に「Nature」でヒトと同じ哺乳類であるマウスの寿命を延長させるとの成果が発表され、種を超えた寿命延長作用として、大きな注目を集めました。

マウスなどのモデル生物・実験動物を用いた研究では、

  • 寿命延長
  • 抗炎症
  • 抗癌
  • 認知症予防
  • 放射線による障害の抑止
  • 血糖降下、脂肪の合成や蓄積に関わる酵素の抑制

などの効果が報告されています。

サーチュイン遺伝子の活性化

サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子または抗老化遺伝子とも呼ばれ、飢餓やカロリー制限、運動によって活性化します。

レスベラトロールが、サーチュインタンパク質を活性化して、サーチュイン遺伝子をオンにする働きがあると報告されています。

ハーバード大学で行われたマウス実験

  • 高カロリー食
  • 高カロリー食+レスベラトロール

高カロリー食を与えたマウスと、高カロリー食にレスベラトロールを加えて与えたマウスの、寿命を比較した実験が、2006年におこなわれました。

結果、レスベラトロールを与えたマウスは
死亡率が20%も低かったといいます。

サーチュイン遺伝子がオンになったためと考えられますが、はっきりとした因果関係は証明されていません。

サーチュイン遺伝子を直接活性化させない

アメリカに本社を置くバイオテクノロジー企業「アムジェン inc」は、

レスベラトロールは、サーチュイン遺伝子(SIRT1酵素)を直接的に活性化させる可能性は低いと、2009年12月に報告しています。

レスベラトロールは間接的にサーチュイン遺伝子のスイッチをオンにして、活性化させることがわかっています。

ヒトでの効果

レスベラトロールに関しては、数千の論文が出されています。

長寿遺伝子にスイッチを入れるほか、アンチメタボ、認知症予防、糖尿病の改善などの効果が報告されています。

EDや男性更年期に対する効果も期待されています。

ヒトにおける試験

血圧が高めの被験者

血管拡張反応を改善し、動脈硬化を防ぐことや、脳の血流量を増加させることで、認知症を予防する可能性が報告されています。

アルツハイマー病の患者の神経保護(認知症を予防)

アルツハイマー病は、皮質および海馬の進行性および神経変性障害であり、これは最終的に認知障害をもたらします。

レスベラトロールには、抗酸化、抗炎症、および神経保護特性があり、患者の神経新生を促進し、海馬の損傷を防ぎます。

このことからレスベラトロールは、アルツハイマー病の進行を防ぐ可能性が、2018年にブラジルの研究で報告されています。

がんの予防・脳を活性化

健常者が、レスベラトロール2.5gを28日摂取した結果、有意に血中の増殖因子IGF-1やその結合タンパク質IGFBP-3の減少が認められ、乳がんや肺がんのリスクを低減する可能性が報告されています。

レスベラトロールを250mg又は500mg摂取後、45分以降で濃度依存的に前頭葉の血流の亢進が認められ、脳機能の改善に役立つと報告されています。

肥満男性のダイエット効果

2011年、オランダの研究チームが、肥満男性にレスベラトロールを投与したところ、カロリー制限をしたのと同等の効果が得られました。

対象:
肥満男性11人
健康な男性11人

研究方法:

  • レスベラトロール(150mg/日)のサプリメント
  • プラセボ(偽薬)

を用いて、30日間の二重盲検比較試験を実施しました。

トランスレスベラトロールを30日間服用した後に、
エネルギー消費、代謝率、血糖値、血圧は低下し、
肝臓に蓄積した脂肪は減少していることがわかりました。

  • 血糖値・インスリン抵抗性の改善
  • 収縮期血圧の低下
  • 肝臓の脂肪減少
  • 肝機能(ALT)の数値が低下
  • 安静時代謝・睡眠時代謝の減少(カロリー制限したときと同様の現象)
  • ミトコンドリア機能の活性化

この結果から、レスベラトロールには、肥満の人に対するアンチメタボ効果があると結論しています。

高齢者の糖尿病の改善

2012年2月、アメリカのグループが、高齢者の糖尿病とレスベラトロールに関する論文を発表しました。

血糖コントロールが悪い65歳以上の被験者に、レスベラトロールを一日に1~2g、4週間投与したところ、食後高血糖の改善、インスリン感受性の改善など、糖代謝の改善が認めらました。

対象:
血糖コントロールが悪い65歳以上の被験者

調査:
レスベラトロール投与(1~2g/日、4週間)

結果:

  • 食後高血糖の改善
  • インスリン感受性の改善

この結果から、レスベラトロールには、高齢者の糖代謝を改善する効果があると結論しています。

リンゴンベリーの美容効果

レスベラトロールを含有するリンゴンベリーのヒトに対する肌質改善効果を検証する目的で、

プラセボ食品を対照とした二重盲検並行群間比較試験により検討しました。

対象:通常人女性48名

  • リンゴンベリーエキス(トランスレスベラトロール12mg/40mg含有):24名
  • プラセボ(偽薬)カプセル:24名

のグループに分けました。

被験者は12週間、それぞれ1日1回1粒を、経口摂取しました。

試験項目:
肌測定(肌弾性、角質水分量)
自覚アンケート(VAS)

これらの検査は、摂取前、摂取4週後、摂取8週後、摂取12週後に実施しました。

その結果、リンゴンベリーエキスグループでは、肌弾性が摂取開始時と比較して摂取8週目、12週目で有意な改善が認められました。

角質水分量においては、摂取開始時から12週目までに、プラセボグループと比較して有意ではなかったものの、増加傾向が認められました。

さらに、自覚アンケートでは、肌に関するすべての項目でリンゴンベリーエキスグループ、プラセボグループとも摂取開始から4・8・12週間後に有意な改善が認められました。

また、リンゴンベリーエキス摂取による副作用は確認されませんでした。

これらのことから、トランスレスベラトロールを含むリンゴンベリーエキスを12週間連続摂取することにより、女性の肌弾性の改善がみられ、同時に安全性が高いことが明らかになりました。

レスベラトロールに効果がなし

サーチュイン活性化物質の開発を推進するSirtris社は、
「レスベラトロールには効果がない」
として臨床開発を断念しており、レスベラトロールが肥満や加齢に関連した代謝性異常を改善する効果があるかどうかを立証するためには、さらに多くの調査が必要と考えられます。

レスベラトロールを含む食物

飲料では、赤ブドウの果皮や種に含まれることから、赤ワイン、ぶどうジュースなどに含まれています。

食品ではベリー類に含まれ、ブドウ、ブルーベリー、クワの実(マルベリー)、ビルベリー、クランベリー、リンゴンベリー(コケモモ)に含まれます。

他にもピーナッツの薄皮、ココアパウダー、イタドリ(日本にも広く生育している多年生植物)、 グネモン(東南アジアに分布する木で、果実は食用とされている)、メリンジョなどにも含まれています。

メリンジョ(ムリンジョ)は、インドネシア原産の樹木で、現地では「生命の樹」と呼ばれています。

メリンジョの実や種にレスベラトールが含まれていて、インドネシアでは日常的に、実が食されています。

レスベラトロール同士が結びついたレスベラトール二量体が、メリンジョには含まれているのが特徴で、摂取後、血液中に長時間滞在して、必要なときにレスベラトロールになって働いていると考えられています。

メリンジョの実から作られた伝統的な食べ物「ウンピン」に加工され、油でサッと揚げた「木の実せんべい」は人気で、子どもから老人までによく食されています。

インドネシアの中でも、このウンピンを良く食べる地域の人の平均寿命は、国全体よりも5~6歳も上回っているというのですから、メリンジョの効果は期待できそうです。

リンゴンベリー(コケモモ)は、ベリー系のレスベラトロール量を調べたところ、含有量が最も高かったという調査結果があります。(ブドウに比べて約2.4倍、ブルーベリーに比べて5倍以上)

フィンランドなど北欧では、森の中にリンゴンベリーが自生し、肉料理の付け合わせやジャムにするなど、食用として用いられています。

日本ではコケモモという、少し違う品種として存在していますが、高山植物なので採取してはいけないという保護条例があります。

レスベラトロール含有量

レスベラトロールの様々な効果を得るために、適度な摂取量は「1日あたりの摂取量の目安は40~100mg」です。

しかし、レスベラトロールを多く含む赤ワインでも、1本飲んで6mg程度しか摂取できないといわれています。

飲料
ワインとぶどうジュースに含まれるレスベラトロール量
飲料 1リットルに含まれる
総レスベラトロール
(mg/l)
グラス1杯分の
総レスベラトロール
(mg/150ml)
赤ワイン
(世界)
1.98~7.13 0.30~1.07
赤ワイン
(スペイン産)
1.92~12.59 0.29~1.89
赤ブドウ・ジュース
(スペイン産)
1.14~8.69 0.17~1.30
ロゼ・ワイン
(スペイン産)
0.43~3.52 0.06~0.53
赤ワイン
(ピノノワール)
0.40~2.0 0.06~0.30
白ワイン
(スペイン産)
0.05~1.80 0.01~0.27
食品
食品に含まれるレスベラトロール量
食品 1サービング単位 総レスベラトロール
(mg)
ピーナッツ
(生のもの)
1c(146g) 0.01~0.26
ピーナッツ
(茹でたもの)
1c(180g) 0.32~1.28
ピーナッツ・バター 1c(258g) 0.04~0.13
赤ブドウ 1c(160g) 0.24~1.25
ココアの粉 1c(200g) 0.28~0.46

レスベラトロールのサプリメント

多くの研究で示されている効果を示すだけのレスベラトロールを、赤ワインだけで摂ろうとすると、1日数十本~数百本の赤ワインを飲む計算になります。

通常の食生活で摂取するのは現実的ではありません。そこで、サプリメントとして効率的に摂取する方法があります。

レスベラトロールの多くは、ブドウなどから抽出されたものです。

海外ではイタドリという植物から抽出されたものが、ブドウ由来よりも安価であり、流通しています。

イタドリの根茎は、コジョウコン(虎杖根)という生薬の医薬品原料なので、日本では食品の原料としては使えません。

レスベラトロールの純度によっては、緩下作用などの生薬の効果が発現するかもしれません。

健常人を対象にした臨床試験で、毎日高容量(2500mgあるいは5000mg)のレスベラトロールを摂取した場合、数日後に腹痛や下痢などの症状が現れることが確認されています。

また健康食品として国内で流通しているレスベラトロールは、国が健康の保持増進効果を確認したものではないため、分類上は一般食品であり、安全性に関してもその摂取基準や上限量も設定されていません。

7章 若返り